定盤の基礎知識
2024.11.08
防振定盤は、精密な測定や高精度な加工を支えるために欠かせない装置です。外部からの振動が測定精度に与える影響を抑えるため、防振システムを組み合わせた定盤が必要となります。本記事では、防振定盤の概要や使用される防振装置の種類、用途、さらに大和重工が提供する定盤の強みについて詳しく解説します。
定盤は、一般的には機械装置の加工/組立/検査/実験などを行うための基準平面(水平面)として用いられます。
定盤の平面は「機械加工」「きさげ」等により、必要な精度に仕上げられています。表面は、機械や装置を固定するために、T溝加工やタップ穴加工が行われることが多く、測定のための基準線や基準溝を加工することも可能です。
また、必要となる平面精度を保証するために、剛性が高い材質が用いられ、その構造もリブ構造や箱型形状が多用されます。また、経年変化による平面度変化を校正するために、レベル調整機構が組み込まれている場合が多いです。
近年、その用途は自動車やエンジン等の振動実験、音響計測など多様化しており、防振機能など多様な機能が求められるようになってきております。
主な定盤の材質は、
という3種類があります。
また定盤は、設置方式の違いにより、
という2つに分けることができます。
このような定盤の中でも、特に製品や部品の寸法・形状を正確に測定するための基準となる平面を提供する定盤が、「測定用定盤」です。
測定用定盤が理想平面を提供・維持することで、測定対象の寸法や形状を正確に把握できるようになり、誤差の少ない製品づくりが可能となります。
特に製造業や品質管理の現場では、製品の寸法を正確に測定し、規格通りの品質を担保するために、定盤の平面精度が重要です。測定時に少しでも基準が狂えば、結果の信頼性が低下するため、測定用定盤の精度は製造工程全体の効率と信頼性に大きく影響します。このように、理想平面を提供する測定用定盤があることで、検査効率と測定結果の精度が保証され、安定した品質管理が実現します。
測定用定盤は、製品の品質や寸法精度を測定・検査するために、製造業をはじめとするさまざまな産業で活用されています。以下に、代表的な業界ごとの用途を解説します。
自動車業界では、安全性と精度が特に求められる部品の寸法検査や車体測定に、測定用定盤が利用されています。エンジン部品や車体部品のサイズが設計どおりであるかを厳密に確認するためには、安定した基準平面が不可欠です。最近では、非接触3次元測定器を用いて車のボディやプレス用金型を測定するために、車サイズの部品を乗せることができる大型測定用定盤について、特に自動車メーカーやTier1メーカーの方々からご相談を多くいただいております。
精密機器業界では、特に検査機器・試験装置を組み立てる際の測定時に、測定用定盤が使用されています。検査機器や試験装置は、微細な寸法の検査や品質確認・試験用に使用されますが、装置機器自体の微小な変化も製品性能に大きく影響します。そのため、温度変化や振動に強く、常に安定した平面精度を提供する定盤の上で製造する必要があり、測定用定盤が使用されています。
自動車や精密機器以外の製造業全般においても、寸法検査や製品の品質管理のために測定用定盤が使用されています。特に鋳鉄製定盤は、耐摩耗性や振動吸収性に優れているため、耐久性が求められる大きな部品の検査などでよく採用されます。また、小型の場合は石定盤がよく採用されますが、1mを超える大型定盤の場合は鋳鉄製の定盤が採用されています。
例としては、鉄工所のような鋼材関連の計器や、発電所等のインフラ系の分野では、比較的大型の製品を測定することが多く、そのような際に当社の大型鋳物定盤を測定用定盤として採用いただくケースも増えています。
測定用定盤を選定する際には、使用する用途や検査対象に応じた機能が求められます。以下に、主な機能別の選定ポイントを解説します。
定盤上で検査や実験などを行う場合の定盤の「平面度」は、測定した数値の信頼性に影響されます。また、平面度の許容範囲はJIS規格(JIS B 7513)により0級、1級、2級の3等級に区分されています。
0級クラスの定盤は、工作機械の仕上加工品の検査を行う際の基準面となる精度で、一般的な機械装置の加工/組立/検査/実験などを行う場合は2級クラスで十分と言われています。つまり、大型製品の測定用定盤については2級クラスで十分となります。
特に自動車部品や大型機器の耐久試験など、振動が伴う環境においても安定した測定基準面を提供するのも、測定用定盤に求められる機能の1つです。鋳鉄製の測定用定盤は、減衰特性により外部からの振動による測定精度の低下を防ぐことができるため、重いワークや大型部品の測定に適しています。
測定用定盤は、ある程度の重量にも耐えられる必要があります。そのような中でも鋳鉄製定盤は強度が高く、耐荷重性にも優れているため、重量のある製品や部品の測定に適しています。特にリブ構造を施した設計は、たわみを抑え、平面度を維持したまま長期使用が可能です。許容荷重を確認し、必要に応じて支持ポイントの調整を行うことで、定盤の安定性がさらに高まります。
測定用定盤は頻繁に購入するものではなく、一度購入したら長期にわたって使用されます。また重量がある装置機器の測定をするため、測定用定盤は荷重だけでなく耐摩耗性にも優れている必要があります。そして鋳鉄は、耐摩耗性が高く、長期にわたる使用でも表面の劣化が少ないため、頻繁に使用する製造現場において優れた耐久性を発揮します。測定物が頻繁に置かれる箇所や接触が多い面であっても、摩耗に強いため、平面精度が維持されやすく、安定した基準面を提供します。
測定用定盤を導入する際には、設置後の精度と安定性を確保するため、製作や施工においてもさまざまな工夫が必要です。ここでは、特に重要な測定用定盤における製作・施工ポイントを紹介します。
測定用定盤において何よりも重要なのは、平面度です。基準となる平面度が本当に平面と言えばければ、いくら測定しても信用できるデータにはなりません。そのため、測定用定盤では、理想平面を実現できるような定盤設計が必要と言えます。
>>大型機械・装置のレベル出し・水平調整を実現する“理想平面”へのこだわり
>>解析技術を駆使して剛性・荷重を最適化する定盤設計ノウハウ
定盤を使い続けると、どうしても平面度も設置した当初の平面度から変化をしてしまいます。そのため、設置した後にメンテナンスできるように、平面度を調整することができる機構があるかどうかというのは、測定用定盤を長く使い続けていくうえで重要な要素の1つと言えます。
当サイトを運営する大和重工では、ジャッキ機構のような、設置後に理想平面を維持できる機構を採用することで、メンテナンス性も良い測定用定盤の設計提案をしております。
実際に測定用定盤を設置する際に、たとえどれほど定盤自体が平面度が高かったとしても、設置精度が悪ければ平面度を保証することはできません。そのため、高精度水準器等を用いて設置時に理想平面が出ているかどうかを確認する必要があります。
>>高精度水準器とは?高精度デジタル水準器の仕組みとポイントを解説!
多くの定盤メーカーは、設計・製造・据付までの対応となり、設置後のアフターフォローはサービスに含まれていないことがほとんどです。しかし測定用定盤においては、設置後の理想平面の維持が最も重要です。
当社では、他社ではあまり行われていない定盤の校正・メンテナンスもサービスとして含めてご提案しております。このアフターフォロー体制が、当社が数多くのお客様から選ばれている理由の1つです。
>>定盤の平面度校正・メンテナンスを実施するアフターフォロー体制
大和重工の測定用定盤は、正確な基準面を提供するために、高剛性な鋳鉄製の定盤を使用しています。この定盤は制振性に優れ、変形を防ぎつつ、固有振動数を高めることで外部からの振動影響を最小限に抑えます。鋳鉄の箱型構造により、3m×8mまでの無継ぎ定盤が製作可能で、さらに複数の定盤を連結して大規模な作業環境にも対応できます。
大和重工は、作業現場や試験機器のニーズに応じて測定用定盤をカスタマイズします。例えば、空気バネ(自動レベル調整機構付)を使用した場合、振動吸収能力が高く、荷重変動にも対応できる優れた防振効果が得られます。自動レベル調整機能により、振動源の影響を抑えつつ、安定した測定や作業を実現します。また、ゴム製防振パッドは低コストで手軽に設置でき、広範囲にわたる振動吸収が可能です。
>>大型定盤の設計・鋳造・加工・据付まで”ワンストップ対応”
大和重工の測定用定盤は、自動車メーカーや自動車部品メーカー、建設機械・農業機械メーカー、各種研究機関など、幅広い業界に導入されています。エンジン性能試験や精密機器の測定環境、研究開発における振動抑制を実現し、安定した試験環境を提供しています。これにより、製品の精度向上と試験データの信頼性を確保しています。
レイアウトに応じて、L型、T型、H型などの複雑な設置構成にも対応できる柔軟な設計が可能です。大型の作業場や特殊な試験機配置にも対応し、作業効率や検査精度を最大限に引き出すためのレイアウト調整が行われます。
>>3m×8mまで一体型での製作が可能、または防振機能が付いた特注定盤の製造
鋳物定盤カスタムナビを運営する大和重工株式会社には、定盤の製作実績が多数ございます。
大和重工の定盤「Daiwa定盤」には、上記写真のようにCAEを使用した構造解析を実施しております。定盤の耐荷重は、剛性と支持点の数によって決まります。積載する機械や装置の最大荷重に基づき、変形が許容値以下となるように設計いたします。必要に応じて、CAEによる構造解析を行い、変形状態を詳細にシミュレーションすることも可能です。
定盤平面度の精度は、機械加工を行った時点と据え付け後では異なります。
「Daiwa定盤」は、据え付け後で平面度の保証を行えるように、事前打合せを十分に行い、搬入方法、基礎への固定方法、レベル調整方法などを決めさせて頂き、据付作業も責任を持って請け負います。
一見すると困難に思えますが、定盤据付時の精度を維持して使い続ける事も、「Daiwa定盤」なら可能です。
「Daiwa定盤」には精度を維持し続けるために必要な機構が備わっています。定期的にメンテナンスを行うことで、据付時の精度を維持できますので、定期メンテナンスも安心してお任せください。
続いて、実際に大和重工で製作から据付対応まで行った、測定用定盤の事例・実績をご紹介いたします。
レイアウトマシン設置用の定盤として、基準溝が加工してある仕様にてご相談をいただきました。また、定盤搬入据付工事をスムーズに行えるよう、建屋の設計段階からご協力させていただきました。
ポイントとして、レイアウトマシン用の基準溝やタップ穴加工を実施、さらに輸送の都合上、定盤は一体加工後に分割して輸送、現地にて組み立て作業を行いました。結果、分割定盤であっても高精度な定盤を納入することができ、お客様からもご満足いただいております。
お客様から工場新築に伴い、製品検査用の定盤についてご依頼をいただきました。また、工場の設計段階からご提案をさせていただき、定盤据付基礎部分の仕様についても図面協力をさせていただきました。
ポイントとして、定盤にケガキ線を導入・大荷重ワークに対応するため上面からジャッキ調整が可能な構造を採用し、モルタルで埋め戻していただいた点です。結果として大荷重におよぶワークにも問題なく保持できる定盤としてご使用いただいております。
自動車用プレス金型のメーカー様から、プレス金型の検査用定盤としてご相談をいただきました。また、お客様が実際に使用する検査治具を確認しながら定盤高さ設計を行うなど、お客様の使い勝手に合わせた定盤設計・ご提案を行わせていただきました。
ポイントとしては、クロス溝の加工精度にこだわった点が挙げられます。お客様の製品計測時の基準となる溝ですので、当社での加工の際には真直度と直角度の確認を行いながら加工を行いました。
ピット内に埋め込まれており、かつ精度良く製品測定を行うために定盤のご相談をいただきました。ポイントとして、ピットを埋め戻す際の無収縮モルタル施工を行いやすくするため、定盤側面に空気孔や打設状況を確認できる上面穴の追加設計を行ったが挙げられます。
定盤新設のご相談をお客様からいただきましたが、他設備の新設もあるため、限られた予算内での製作をご要望でした。そこで、定盤本体は無垢材の一体成型とし、上面加工とレベル調整に必要なジャッキ穴等の加工を自社内で行い、コスト面で最適化を行うことができました。
3m×8mまで一体型で鋳物定盤の設計製作・施工まで一貫対応いたします。ご相談・ご用命は鋳物定盤カスタムナビにお任せください。